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人材開発支援助成金とは
人材開発支援助成金は、労働者の職業生活設計の全期間を通じて段階的かつ体系的な職業能力開発を促進するため、雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識および技能の習得をさせるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合等に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
本助成金は次の8つのコースから構成されます。
- OJT と Off-JT を組み合わせた訓練、若年者に対する訓練、労働生産性の向上に資する 訓練など、訓練効果が高い10時間以上の訓練について助成する「特定訓練コース」。
- 職務に関連した知識・技能を習得させるための20時間以上の訓練に対して助成する 「一般訓練コース」。
- 有給の教育訓練休暇制度もしくは長期にわたる教育訓練休暇制度を導入し、実施した場 合に助成する「教育訓練休暇付与コース」。
- 有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者(正社員待遇を受けていない無期雇用労働者を含む。以下「有期契約労働者等」という、いわゆるパートタイムやアルバイトのことです。)に対する職業訓練について助成する「特別育成訓練コース」。
- 中小建設事業主等が職業能力開発促進法による認定訓練を行った場合や、雇用する労働 者に認定訓練を受講させた場合に助成する「建設労働者認定訓練コース」。
- 中小建設事業主等が雇用する建設労働者に技能実習を受講させた場合に助成する「建設労働者技能実習コース」。
- 障害者に対して職業能力開発訓練事業を実施する場合に助成する「障害者職業能力開発コース」。
- デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施する「人への投資促進コース」
もっと具体的に!こういうケースに人材開発支援助成金が活用できます
- 技術系(土木、電気等)のベテラン社員の退職により有資格者が少なくなり、即戦力が必要になったケース。
⇒資格取得の講座受講のために、助成金を使用することができます。
- 介護職員の離職を防止するため、段階ごとのスキルアップのための教育訓練を行う必要があり、人材不足や早期離職を防止するため人材育成を図り、人材確保につなげていく必要があるようなケース。
⇒介護系資格の取得の講座受講のために、助成金を使用することができます。
- 建設業者が、自分の従業員に特別教育や技能講習を教習機関で受けさせるようなケース。
⇒上記の技能実習が助成対象になります。
おおまかな申請期限と流れ
人材開発支援助成金の受給までのおおまかな流れは以下のとおりです。
- 訓練実施計画の作成
- 訓練開始日の1か月前までに、訓練実施計画届を管轄の労働局へ提出
- 2で提出した訓練実施計画届に基づいて、教育訓練を実施
- 訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に、支給申請書を管轄の労働局に申請
- 労働局による審査後、助成金支給の決定
受給要件は、コースごとに全く違いますので、注意してください。
コース例をご紹介
特定訓練コース・一般訓練コース
要件
OFF-JTのみ | OFF-JT+OJT | OFF-JTのみ |
特定訓練コース 訓練時間数: 10時間以上 | 特定訓練コース 《雇用型訓練》 ※必要な訓練時間数は大臣認定の要件によります | 一般訓練コース 訓練時間数: 20時間以上 |
労働生産性向上訓練 :生産性向上に資する特定の訓練 若年人材育成訓練 :事業所の雇用保険被保険者となった日から5年経過せず35歳未満の者を対象とする訓練 熟練技能育成・承継訓練 :熟練技能者の技能承継のための訓練 | 認定実習併用職業訓練 :OFF-JTとOJTを効果的に組み合わせた訓練として厚生労働大臣の認定を受けた訓練※ | 職務に関連した 専門的な知識 および技能の習得 をさせるための 職業訓練であって、特定訓練コースに該当しないもの |
OFF-JTとは、企業の事業活動(通常の業務・生産ライン)と区別して実施する座学・実技訓練をいい、OJTとは、適格な指導者※による指導のもとで、企業内の事業活動の中で実施する実習訓練をいいます。
※訓練を実施する事業所の事業で報酬を貰っている役員等の方や同事業所から賃金を貰っている従業員。
例えば・・・
- パソコン操作 ⇒ 顧客への礼状の作成はOJT / 操作習得用の練習文書の作成はOFF-JT。
- 研磨作業 ⇒ 出荷品を研磨するのはOJT / 出荷しない不良・廃棄品を使って研磨の練習をするのはOFF-JT。
- パーマ施術 ⇒ 自店舗等でお客様に施術するのはOJT / モデルウイッグに施術するのはOFF-JT。
- 調理 ⇒ お客様用の料理を調理するのはOJT / 店内のまかない用の料理を調理するのはOFF-JT。
具体的には、以下のような訓練をした場合に助成されます。
- 若年労働者(採用から5年以内で35歳未満)への訓練。
- 熟練技能者の指導力強化や技能承継のための訓練、認定職業訓練。
基本的に訓練時間は10時間以上と定められています。
上記の訓練内容以外の訓練は、一般訓練コースが適用されます。
一般訓練コースは、20時間以上の時間をかけなければなりません。
支給額は、OFF-JTかOJTかによって変わります。
特定訓練コース | 一般訓練コース |
OFF-JT 賃金助成 1人1時間当たり 760円〈960円〉 (380円〈480円〉) ※上限は1200時間(一部1600時間) OJT 実施助成 20万円(大企業は11万円) | OFF-JT 賃金助成 1人1時間当たり 380円〈480円〉 ※大企業も同じ ※上限は1200時間(1600時間) |
経費助成 対象経費の45%〈60%〉 (30%〈45%〉) ※上限は下記表①の額 | 経費助成 対象経費の30%〈45%〉 ※大企業も同じ ※上限は下記表②の額 |
- 〈〉は生産性の向上が認められる場合の額、()内は大企業の額です。
- 特定分野認定実習併用職業訓練を実施する場合などは、経費助成率が変わります。
- 賃金助成、実施助成は所定労働時間内の訓練に限ります。
- 事業主団体等が申請する場合は、経費助成のみとなります。
経費助成は訓練時間に応じて次の額を上限としています。
訓練時間 | ①特定訓練コース | ②一般訓練コース |
10(20※)時間以上100時間未満 | 15万円(10万円) | 7万円 |
100時間以上200時間未満 | 30万円(20万円) | 15万円 |
200時間以上 | 50万円(30万円) | 20万円 |
- ()内は大企業の額です。
- 1労働者が対象訓練を受講できる回数は、年間職業能力開発計画期間内に3回までです。
- 1事業所が1年間に受給できる限度額は、特定訓練コースを含む場合は1000万円、一般訓練コースのみの場合は500万円です。
教育訓練休暇付与コース
事業主以外が実施する教育訓練、各種検定(職業に必要な労働者の技能及びこれに関連する知識 についての検定)又はキャリアコンサルティングのことをいいます。そのため、これらを受けるために必要な休暇が教育訓練休暇となります。
※なお、この教育訓練休暇は、労働基準法第39条の規定による年次有給休暇(いわゆる通常の有給休暇のことです。)とは異なるものをいいます。
※OJTや業務命令で受講させる訓練や各種検定、業務命令によるキャリアコンサルティングは助成金の対象となりません。
教育訓練休暇制度
数日間以上の教育訓練休暇制度を導入する場合に活用できるコースです。
有給の教育訓練休暇を付与する制度であることが必要となります。
長期教育訓練休暇制度
数ヶ月以上の長期教育訓練休暇制度を導入する場合に活用できるコースです。
最低でも30日以上の休暇を付与する制度であることが必要となります。
事業主以外が行う教育訓練等を受けるために必要な所定労働時間の短縮および所定外労働時間の免除を措置し、自発的職業能力開発を受ける機会の確保等を通じた職業能力開発および向上を促進する制度です。
助成額
教育訓練休暇制度の場合
制度導入・実施助成 | |
30万円 | 生産性要件を満たす場合 36万円 |
長期教育訓練休暇制度の場合
賃金助成(※) | 経費助成 | ||
6,000円 | 生産性要件を満たす場合 7,200円 |
20万円 | 生産性要件を満たす場合 24万円 |
※有給による休暇取得に対する1人1日当たりの賃金助成額となり、最大150日分。雇用する企業全体の被保険者数が100人未満の企業は1人、同100人以上の企業は2人を支給対象者数の上限とします。
教育訓練短時間勤務等制度の場合
制度導入・実施助成 | |
20万円 | 生産性要件を満たす場合 24万円 |
おおまかな手続きの流れ
- 制度導入・適用計画届を制度導入・適用計画期間(3年間固定)の初日から起算して6か月前から 1か月前までに管轄の都道府県労働局へ提出。
- 就業規則または労働協約への規定(制度の施行日を明記)。
施行日までに就業規則または労働協約、事業内職業能力開発計画等の労働者への周知。
(就業規則に規定した場合)規定した制度施行日までに労働基準監督署へ就業規則の届出。 - 制度導入・適用計画に従い、被保険者へ教育訓練休暇を付与。
- 教育訓練休暇を取得後、所定の期日までに支給申請書などを管轄の都道府県労働局へ提出。
- 助成金の受給。
制度導入・適用計画期間とは?
就業規則もしくは労働協約に規定した制度の施行日(導入日)を初日とした3年間(固定) の期間です。
例:就業規則もしくは労働協約に規定した制度の施行日が2020年5月1日の場合 →制度導入・適用計画期間は、2020年5月1日~2023年4月30日。
教育訓練休暇制度、長期教育訓練休暇制度について、各制度の適用対象者(被保険者)の就業規則または労働協約に規定する必要があります。
制度導入・適用計画を提出するより前に制度を導入した場合は助成対象外となります。
よくある質問
教育訓練休暇の対象とならない訓練はありますか?
例えば以下のような訓練については、対象になりません。
- OJT ・業務命令により受講させるもの。
- 通常の事業活動の範囲内で行われるもの(自社の経営方針の説明・報告会、自社 製品・サービス・社内制度に関する説明など)。
- 実施目的が訓練に直接関連しない内容のもの ・研究会、発表会、見学会、視察旅行など ・労働者の休暇日に受講するもの(休暇日を振り替えたとしても対象となりません)。
- 事業主が主催するOFF-JT(事業主が事業主以外の設置する教育訓練施設等に依頼して行うもの、外部講師を派遣して行うものも対象となりません)などです。
令和4年9月からの改正点
教育訓練休暇等付与コース
・所定労働時間の免除を適用する労働者の要件が緩和されています。
・教育訓練短時間勤務等制度を導入後、1回でも労働者に適用すれば支給申請を行うことが可能となりました。